産業革命と男女の労働


18世紀から19世紀に生じた産業革命は、社会に大きな変化を生み出した。その中には、男女の労働環境の変化も含まれる。変化の特徴としては、大まかに分類すれば2点があげられる。それは「男女の協働を必要としなくなったこと」と「主婦の役割の変化」である。それぞれの特徴ついて以下でみていきたい。


はじめに、男女の協働についてみていきたい。産業革命以前は、炊事には男女の協働が不可欠であった。例えば調理は女性の仕事であり、開放炉の燃料である薪を集めたり、調理に使う穀粉の用意などは男性が行っていた。つまり、男女が協働しなければ、生活も困難であったのである。しかし、 このような協働関係が産業革命によって連鎖的に変化していく。工業化に伴う道具や設備の普及、それによる量産化などにより、家事労働の個々の作業が軽減されていったのである。具体的には、ストーブや穀粉があげられる。以前は開放炉が一般的であったが、それが炊事暖房用ストーブに転換していった。 そのストーブは燃料にコークスを使用するため、薪を集める必要性を低下させた。また穀粉については、 製粉業の工業化や輸送効率の向上により、上質粉などが手に入るようになったため粉を自分たちで調達する必要がなくなった。産業革命によるこれらの変化によって個々の作業が軽減されていき、男女の協働を必要としなくなったのである。しかし、男性の仕事は軽減され家事をする必要がなくなった一方、女性は家事を専ら担う形だったため労働の絶対量は軽減されなかった。



 次に主婦の役割の変化についてみていきたい。家事から解放された男性は工場などに出稼ぎに行くようになったため、購買力が向上し、様々なモノを購入できるようになった。その結果、物質的な状況の変化により家庭内の労働、つまり主婦の労働・役割が変化していった。そこには質的には軽減された面があるが、量的には増え複雑になったため、家事の負担は祖母世代よりも重くなった。またそれだけでなく、新しいモノの誕生はライフスタイルの変化を生み出し、世代間の知識の継承を断絶させた。伝統から切り離された主婦には新たな理想型がつくられた。家庭を労働力の再生産の場、次世代労働力の生産の場と位置づけ、そこでは主婦に無償で母性を体現する役割が課せられたのである。


 産業革命により、社会は変化を求められた。その変化は、家庭内にも侵入し、男女の労働環境を変化させた。つまり、男女の協働が必要なくなったことにより、男性は外で賃労働を行い、一方女性は新たなモノを使いながら無償の愛で家庭を守っていくといった環境を作り出したのである。

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